最悪 (奥田英朗)/講談社



鉄工所の社長の川谷は、近隣との軋轢や取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。
銀行員のみどりは、職場の人間関係と家庭の問題に悩んでいた。
プータローの和也は、ヤクザに弱みを握られ、とてつもない金額を要求されていた。

無縁だった3人の人生が交差するとき、運命は加速度をつけて転落し始める――
(Amazonのあらすじより)

タイトルからして暗雲がたれこめているわけですけれども、3人の日常の描写から将来の不安を読者にイメージさせる手腕がめちゃくちゃうまい。
冒頭で主人公のひとり川谷が、自分のトラックを見て、
(タイヤの溝を指でなぞってみて、とっくに寿命がきていることに少し考えを巡らしたが、(大丈夫だろう)と自分に言い聞かせて運転席に乗り込んだ。)
この1文で、川谷の現状を端的に表現しているのがすごいと思いました。
3人ともハードな昨日をくぐりぬけ、今日を生き抜く手段はあるものの、明日のことを考える余裕がない。
それが他人事と思えないというか、身につまされるというか。
3人にトラブルを持ちこんでくる登場人物たちも、主人公の視点から見れば得体のしれないモンスターですが、立場を変えて見れば彼らもまた弱者であり「なぜ自分だけこんな目に」と思っている人間であったりもする。
だから「いったいどうしてこんなことに」と振り返ってみても、どこがターニングポイントだったのか説明できず、しかし退路はどこにもない――そのことがとても怖かったです。
物語の最後の3人は、最初のシーンから比べると明らかにマイナスの位置にいますが、少なくとも不幸そうには見えません。
彼らは愚かだったのかもしれません。あるいはもっと忍耐すべきだったのかもしれません。
でもたぶん最も必要だったことは、もっと早い段階のどこかで降りる勇気だったろうと思います。
(それはとても難しいことですが。)
いろいろ考えさせられる本でした。

コメント

のん

No title
あはは♪
まるで私の人生(半生?)みたいですね~~~
「早い段階」が分ればみんな苦労しませんって^^
まったく・・・ って感じですかね?
で、今現在も当てハマっている事ではあります・・・? (;´▽`A``

KOR

No title
NONさん>私の人生みたいでもありますよ^^;
結果論でいうのは簡単なんですけどね。なかなか難しいと思います。

べる

No title
まさしく最悪な展開の連続で、ほんとに最悪!って思いながら読みました(笑)。でも、面白かった!もうすぐ新作の『無理』が回ってきそうなので、その前に『邪魔』を読んでしまおうと思って借りてきているところです。あと一週間のうちには読む予定~。TBさせて下さい♪

香津葉

No title
最後が「不幸そうには見えない」というあたりが、唯一の救いなのでしょうか?
んー、どうしようかなぁ。
読む本がたまってるんだよなぁ^^;
読んだら暗くなりそうな気もするなぁ><

Angel

No title
今の時代3人の物語は、みんなの物語でもありますね。
どんな時も流されず、自分を信じることは容易くないと思います。
でも、自分を守るのは自分自身しかいないんですよね。
この物語は、“転ばぬ先の杖”になるかもしれませんね。

KOR

No title
べるさん>トラバありがとうございます♪
「邪魔」のレビュー、楽しみにしてますね。
私からもトラバ返しします☆

KOR

No title
香津葉さん>おもしろいけど、ページをめくるのが辛い、という体験ができます^^;
読後はたしかにちょっと落ちますね。体調のよいときにでもいかがでしょう?(笑)

KOR

No title
angelさん>最悪な目にあうのに、その原因が単純に自業自得とはいえないんですよね。そこがリアルであり、みんなの物語たりえている部分だと思います。

pynchon0

No title
こんばんは。
悲しい,,,結末,,,なんですか,,,???
それとも,,,明るい,,,未来,,,なんですか,,,???
タイトルだけで,,,少し,,,引いてしまいたくなる,,,感じなので,,,。
ごめんなさい,,,。
教えて,,,くださって,,,ありがとうございます..;:*;+*☆★※.;*``♪

KOR

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pynchon0さん>引きますよね^^;
まあハッピーエンドとはいえないと思います。救いはありますが。
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